§4 サスペンションストロークによるトー角コントロール

横力・前後力のトー角コントロールではタイヤに入る横力、前後力によるトー角変化について説明したが、サスペンションの上下方向のストロークによるトー角をコントロールを説明する

 

上下方向といっても実際は旋回する時に車体がロールすることで、サスペンションがストロークする場合で、サスペンションが見かけ上車体に対して上下する

 

先ずはリアサスペンション

ストラットやマルチリンクサスペンションでは車軸の前後にロアリンクが取り付けられている

図―1に示すように、一般的には前側のロアリンクは後ろ側のロアリンクよりも短い設定になっている

それにより、車がロールしてサスペンションがバウンドストローク(縮む方向:コーナーリング状態では外輪に相当)した時に、前後ロアアームの軌跡の違いからタイヤをトーイン方向に向けることが狙いである

前項で説明したように旋回軌跡に対してトーインを持たせることで、内向きのコーナーリングフォースを発生させ、車を安定させるためである

 

図―1  リアサスペンション  

                                   

 図―2   図―1のトー角変化

 

図―3に示すように、前輪ではロアアームとタイロッドが、後輪における車軸の前後ロアアームの関係になる

前輪の場合はバウンドストローク(縮む方向:コーナーリング状態では外輪に相当)した時に、アンダーステアとなるトーアウトに設定するのが一般的である

 

 

          

図―3 フロントサスペンション(1)   図―4 レガシィフロントサスペンションレイアウト

 

以上のようにリンクやタイロッドの組み合わせが平行の場合、リバウンド側(伸びる方向:コーナーリング状態では内輪に相当)もバウンド側(縮む方向:コーナーリング状態では外輪に相当)と同様の方向に向きを変えてしまうので、リンク位置関係を変えて(図-5,7)、コーナーリングの時に内外輪が同じ方向を向く設定をするのが一般的である

そのように設定することで、コーナーリングでリバウンドする内輪がトーインとなり、旋回方向に向けることで内向きのコーナリングフォースを得ることが出来る

 

 

          

図―5 フロントサスペンション2       図―6 図―5のトー角変化 

 

後輪においても同様の設定をするが、サスペンションのジオメトリは、左右方向入力、前後方向入力やロールの大きさ使用するタイヤの特性などを勘案し、様々な要件を満たすための特性を最適化するために、ジオメトリを決定する必要がある

勿論車のハンドリングが重要な車、直進安定性を重視する車など、キャラクターに合わせ設定となる