§6 サスペンションの機能と種類

サスペンションの機能や種類について説明する

 

1.サスペンションとは

 

サスペンションとは、路面の凸凹を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、乗り心地や操縦安定性などを司る機構である

操縦安定性性能は、路面と車体の間にあるタイヤのアライメントによって決められる

ステアリングホイールを操舵すると、タイヤに車両の進行方向に対して角度がつき、通常の車線変更では、ステアリングホイールを30度程度転舵する事で車両は車線を変更する事が出来る

この時タイヤの角度は車両の進行方向に対して凡そ1.6~2度程度である

この様な僅かなタイヤ角度の変化で1,500kgもある車両を、素早く移動させる力が発生することになる

(ステアリングホイールの転舵角度とタイヤの角度変化の比をステアリングギヤ比という。通常ステアリングギヤ比は15~18程度に設定されているで、ステアリング転舵角30度をギヤ比15で割ると2度になる)

 

 

このようにサスペンションはタイヤのアライメントを制御し、車に適切な運動性能を与える重要な機構である

 

2.サスペンションに作用する力

 

サスペンションに作用する力は何れもタイヤからの力で車両との間で以下のようになる

 

・駆動力、エンジンブレーキはスピンドルの前後方向に作用する

・制動力はタイヤ接地面に作用するので、サスが捩じられる

・横力はタイヤ接地面内側に作用するので、旋回外側のロアアームには圧縮が、アッパアーム側には引張り力が作用し、

旋回内側はその逆となる

 

 

 

これらの力は時として数百kgにも達する

これらの力がサスペンションに作用した時に、タイヤが意図しない方向に向かないようにサスペンションや、それを支える車体を設計する必要がある

前述したように、僅か2度程度のタイヤの角度変化により、車両を大きく移動させることが出来るので、その1/10、タイヤ角度で言えば約10分変化することがあれば、運転者は予期せぬ車両挙動として認知することになる

 

従って、剛性感、確り感を向上させるには、サスペンションに留まらず、車体を含めた総合設計力が求められる事になる

 

3.サスペンションの種類

 

車の高性能化と共に、コスト、重量、スペースと操縦性能、乗心地性能の兼ね合いを図りながら、より良いサスペンションが開発改良されて来ました。

今までに種々のサスペンションが開発されてきましたが、それらの原型は比較的古い時代に作られています。近年ではそれらに改良を加え、最新サスペンションとして市場に展開されています。

 

以下代表的なサスペンションを紹介する

   

独立懸架

 

 1 ダブルウィッシュボーン式サスペンション

 サスペンションの剛性を確保する事が容易

サスペンションがバンプしたときのキャンバー変化を最小限に抑える事が可能

タイヤと路面の接地面の変化が少く、グリップ力の変化が少ない

 

 2 マルチリンク式サスペンション 1982年~

 独立した数本のアームから成る

全てのアームが独立しているので、ダブルウィッシュボーン式サスペンションに比べ、リンクの配置自由度が増し、よりきめ細やかなアライメントコントロールが可能になる

 

3 マクファーソンストラット式サスペンション  1940年~  

ショックアブソーバを補強してアッパーアームとしての機能をもたせたもので、他の方式と比較してストロークを大きくでき、スペース効率に優れ、軽量で低コストが特徴

アッパーアームがないので、エンジンルームが広く取れるので、殆どの横置きエンジンFWD車で採用されている

 

4 スーパーストラット式サスペンション  1991年~

 

マクファーソンストラット式サスペンションを、ダブルウィッシュボーン式サスペンションに対抗し得るように改良したもので、サスペンションがストロークする際に発生するキャンバー角変化を抑え、操縦安定性や旋回時のグリップ限界を大幅に向上させる狙い 

 

5 トレ-リングアーム式サスペンション

5-1フルトレーリング式サスペンション  

スイング軸と車軸がほぼ平行のものはフルトレーリングアームとも呼ばれ、主に前輪駆動(FWD)車の後輪に用いられている

スイングの軌跡から、ストローク時のトーとキャンバー変化がほとんどないが、車体ロール時には左右同じ方向のキャンバー角となる 

 

  5-2セミトレーリング式サスペンション 1950年代~  

ドライブシャフトの屈曲や伸縮が少なくなるよう、スイング軸を水平方向に偏向させている

ストローク時のスイングの軌跡から、トーとキャンバーの変化が大きいサスペンション

 

 6 スイングアクスル式サスペンション 1920年代~  

スイングアームの車台側の支点軸が車台中心線と平行で、ハブ側と剛結ドライブシャフトは屈曲点が一箇所で伸縮はしない

横方向のリンクはアクスル(駆動軸)かねるので安価に出来るが、キャンバー変化の大きいサスペンション

 

半独立懸架

 

 7 トーションビーム式サスペンション  

前輪駆動(FWD)車の後輪に用いられ、左右のトレーリングアームやリンクが、捩じれるクロスビームでつながれている

左右の車輪はある程度個別に上下動(ストローク)でき、車軸懸架と独立懸架の中間的で、クロスビームがトーションバー・スプリングとして働き、スタビライザーと同様の働きをする

 

車軸懸架(固定車軸式)

 

 8 ド・ディオンアクスル式サスペンション 1893年開発~  

軸懸架式サスペンションの路面追従性を向上させるため、ばね下重量の軽減を狙い、デファレンシャルギアをアクスルハウジングと分離し、車体側取り付ける

デフがサスペンションから切り離されるのでバネ下重量が軽く、リジッド式のメリットである対地キャンバー変化の少なさで、乗り心地と路面追従性の向上を狙っている

 

9 リーフ・スプリング式サスペンション  

構造が単純かつ頑丈であり、ほかの方式に比べ安価でできる

車軸を押さえるものがバネであるため、ロール時など、左右のたわみ量が異なる場合、車軸のずれも左右で異なり、乗り心地や操縦安定性が劣る

 

10 リンク式サスペンション

10-1 3リンク式サスペンション

 

車軸と車台を数本のリンクで結び、車軸の位置を決める

リンクは取付方向に働く力のみを受け持ち、鉛直方向の荷重はバネで支える

リンクは両端に軸受けやゴムブッシュを持ち、ある程度自由に動きながら駆動力や制動力を車体に伝える 

10-2 4リンク式サスペンション  

 

10-3 5リンク式サスペンション  

 

  車軸懸架系に使用されるラテラルリンクの種類  

通常のラテラルリンクでは、サスペンションの上下動にあわせて左右方向の移動が発生し操縦性や乗心地に影響が現れる

サスペンションが上下しても横方向の移動が発生しないようなリンク機構がある