§1 車は何故曲がることが出来るのか

 

ニュートンの運動法則

[運動の第一法則]

物体に外力が働かない時は、物体は静止、または等速度運動を続ける

 

[運動の第二法則]

物体に外力が作用すると加速度を生じ、その大きさは、加えた力の大きさに比例し、質量に反比例し、その向きは加えた力の向きと同じである

 

であるから動き出した車は直進運動を続ける

実際は走行抵抗が作用し徐々に減速していくので、等速度運動を続けるには走行抵抗に見合った駆動力を与ええる必要がある

つまり走行抵抗=駆動力なので走行抵抗が少ないほど燃費が良いことになる(曲がるには直接関係ありません)

 

ここでは車の操縦安定性について考える

 

直進している車の向きを変える(旋回運動させる)には、ステアリングホイールを操作し、タイヤの向きを変える

この時に何が起きているのか

 

タイヤの向きが変わったので、車はタイヤの向いた方向に進むわけではない

直進している車のタイヤの向きを変えると、車の進行方向とタイヤの向きの角度差が発生する

この車の進行方向とタイヤの向きの差をスリップアングルといい、この量に応じてタイヤに直角な方向に力が発生する

これをコーナーリングフォースと呼び、図-1のようにスリップアングルの増加に伴い大きくなるが、概ね10度程度から頭打ちとなり、更にスリップアングルが増えると減少していく

 

図ー1 スリップアングルとコーナーリングフォースの関係

 

走りの好きな人なら、コーナーへの進入速度が速すぎ曲がりきれないので、ステアリングホイールを一杯に切ったのに全然車が曲がってくれない事を経験したことがあると思うが、これがまさにスリップアングルの付け過ぎで、コーナーリングフォースのピークを過ぎた領域の走行状態である

 

コーナーリングフォースの発生メカニズムは、図―2のようにスリップアングルによって発生するタイヤの接地面の変形を、元に戻そうとする復元力である

 

図ー2 コーナリングフォースの発生メカニズム

 

タイヤは回転しているため、常に新しい接地面でタイヤの変形が続くので、コーナーリングフォースは連続して発生し、車は旋回運動を維持することが出来る

更にステアリングホイールを切り込めば、スリップアングルが増加しコーナーリングフォースが大きくなるので、ステアリングホイールを切り込む前よりも車は小さな旋回半径で旋回を始める

 

この時車の速度が同じならば遠心力が大きくなるので、スリップアングルを大きくとって遠心力に釣り合うコーナーリングフォースを出し続ける必要がある

但し前述したようにスリップアングルを大きく取り過ぎるとコーナーリングフォースは減少していくので回転半径が大きくなってしまうので注意が必要である

ステアリングホイールを戻すと、スリップアングルは減少しコーナーリングフォースが小さくなるので、車はコーナーリングフォースと遠心力がバランスする旋回半径まで外側に膨れることになる

コーナーが終了したらステアリングホイールを直進状態に戻せば、車は直進を始める

 

コーナーリングしている車の後輪にも、図―3のようにスリップアングルが付き、コーナーリングフォースが発生する

 

図ー3 旋回中のタイヤスリップアングル

 

 

※コーナーリングフォースはタイヤの摩擦力が関係している訳である

 タイヤはゴムでできており、ゴムの摩擦力は金属同士の摩擦力と違い、図ー4に示すように単位面積荷重により変化する特性を持っている

 同じ重量の車両に幅の広いタイヤを装着すると路面と、路面との接触面積が増えることから、単位面積の荷重が低減され摩擦係数が上がることになる

 従って、タイヤのコーナーリングフォースを十分に発揮させるには、タイヤが路面に片当たりしないように対地キャンバーを正確に保持する必要がある

 

 図ー4 ゴムの垂直荷重と摩擦係数の関係