自動車概論 §3

自動車の仕組

 

自動車の機能は大きく分けて、「走る」、「曲がる」、「止まる」の3っの要素で成り立っています

 

■止まる

 

車を停止させるのは勿論ブレーキの役目ですが、現在のブレーキ性能を考えると、最終的にブレーキ性能を支えるのはタイヤの摩擦力である。

タイヤの摩擦力は車の速度とタイヤの回転で決まるタイヤの速度比で変化する。

図―20は横軸にタイヤのスリップ率、縦軸に制動力(ブレーキ力)を表したものですが、スリップ率ゼロ(車の速度とタイヤの回転周速度が一緒)では制動力がゼロつまりブレーキ力は発生しない。

スリップ率100%(タイヤをロックさせた状態)では、タイヤの摩擦係数にタイヤに加わった荷重で発生する摩擦力が得られる。

しかし、スリップ率ゼロと100%の途中に制動力が最大になるところがある。

スリップ率で10%前後のところで最大となる。

現在では殆どの車に装着されているABS(Anti-lock Braking Systemアンチロックブレ-キングシステム)は、この領域にスリップ率を維持して、初心者でもその車の持つブレーキ能力を引き出せるシステムである。

 

ただし、緊急時にABSを作動させるほど強くブレーキペダルを踏めない運転者も多くる。

このABSも、ブレーキを作動させスリップ率が制動力の最大値をだす点を超えた時に、コンピューター制御でブレーキの液圧を自動的に低下させ、タイヤの回転速度を回復させる方法をとっているので、一部の砂利道(特に玉石路等)や圧雪路(ミラーバーン)では摩擦係数が低すぎてタイヤの回転を回復できない事があるので、過信は禁物である。

 

ABSの最大の利点はタイヤをロック(スリップ率100%)させない事である。

タイヤがロックすると、ステアリング操作でタイヤの向きを変えても車は進路を変えることが出来なくなるので、ABS(アンチロックブレ-キングシステム)で制動時にも常にタイヤを回転させることで、危険回避を行うことが出来ようになる。

 

図―20 タイヤ速度と路面(車)速度のスリップ率と制動力の関係

 

図―21は降雨時のタイヤと路面の摩擦係数の関係を表している。

乾いた路面は摩擦係数が高く、車の向きを変え易く、制動距離を短くすることが出来る。

降雨により路面が濡れると摩擦係数が下がり、乾いている路面より車の向きを変え難かったり、制動距離が伸びることになる。

しかし、雨の降り始めは路面に積もった埃などが、雨によってクリーム状になり、雨が十分に降った時より滑り易い状態になるので注意が必要となる。

 

図―21 天候状態によるタイヤと路面の摩擦係数の関係

 

 

タイヤの摩擦円

タイヤには加速する時の駆動力、車の方向を変えたり維持したりする横力、そしてブレーキによる制動力が働く。

これらが単独で発生する時は、タイヤの性能を十分に使用できるが、同時に発生するとそれぞれの力の大きさに応じて、互いに目減りすることになる。

図―22はタイヤに見立てたゴムの円柱である。

この円柱のどの方向に力を加えても、摩擦力はおなじである。

360度、どの方向でも摩擦力が一定なので、これを摩擦円と呼んでいる。

 

図―22 摩擦円のイメージ

 

図―23は制動力が作用している時の横力がどうなるかの説明図である。

今制動力Bがタイヤに作用したとすると、横力D(曲がると表示されている力)は摩擦円上のCに制動力Bとの関係からDの大きさになる。

もし制動力Bが作用していなければ横力は円周上の大きさになる。

仮にフルブレーキングAでタイヤの摩擦性能を全て使ってしまうと、曲がる方向の分力はゼロとなってしまい、コーナーリング中であればタイヤは車を横力で止める事が出来ず、車はコーナーの外に向かって飛び出すことになる。

つまり、急ハンドル、急ブレーキ、急加速が重なると、単独で行われたステアリング操作、ブレーキ、加速よりもタイヤの反応が少なくなり、車は運転者が意図した方向に進まず、事故に繋がる確率が高くなる。

 

図―23 摩擦円と制動力、駆動力、ブレーキ力の関係

 

以上が、「走る」「曲がる」「止まる」に関する簡単な説明です。