自動車概論 §2

自動車の仕組

 

自動車の機能は大きく分けて、「走る」、「曲がる」、「止まる」の3っの要素で成り立っています

 

 

■曲がる

 

ステアリングシステム

ステアリングホイールを左右に回転させることで、車を左や右に旋回させることが出来ます。

ステアリングは、走行中にクルマの向きを変えるための重要なシステムです。

その構造は大きく分けて2つあります。

ひとつ目はラック&ピニオン式と呼ばれるもので、ステアリングシャフトの先端にピニオンギヤを取り付け、それをシャフトに刻まれたラック(歯)と噛み合わせることでピニオンギヤの動きを横方向に変換します。

構造自体が簡単なため、軽量なシステムを作り出すことが可能です。

また、ステアリング操作時の剛性が高く、応答性にも優れているため、スポーツモデルなどにも積極的に採用されています。

 

もうひとつは、ボールナット式と呼ばれるシステムです。

これは、ラック&ピニオン式と比べるとパーツ数が多く、構造が複雑になるデメリットがあります。

しかし、動作がスムーズで、かつステアリングのギヤ比を大きくできるというメリットがあるため、大きな操作力を必要とするトラックなどのステアリング形式に適しています。

ちなみに、現在のクルマにはパワーステアリングという、軽い力でステアリングを回すことができるシステムが搭載されています。

操作をする際のパワーステアリングのアシスト方法は、油圧式や電動式などがありますが、車種によって採用されている方式は異なっています。

従来のアシスト方法は油圧式が殆どでしたが、油圧式はステアリングホイールを操作しない時(直進)もエンジンに取り付けられた油圧ポンプを駆動しています。

(駆動力はエンジンですので、その分ガソリンを消費します)

電気式のアシスト方式では、ステアリングホイールを操作した時だけモーターが作動するので、その分燃費が改善されるので、最近の車では多く採用されるようになった。

 

 

      図―12 ステアリング方式

 

 

      図―13 ラック&(アンド)ピニオン式の詳細図

ラック&ピニオン式は、ステアリングホイールに直結したピニオンでラックを動かし、ラックの先につけられたロッドでタイヤを動かす

 

 

      図―14 ボールナット式の詳細図

ボールナット式は、ステアリングホイールに直結したウォームシャフトでセクターギヤを動かし、セクターギヤに連結したドラッグリンクでタイヤの向きをかえる

 

タイヤ

実際に車の向きを変えるのはタイヤと路面の摩擦力である。

タイヤの向きを変えるとこの摩擦力によって車の方向を変える力や車を横方向に支える力(コーナーリングフォース)が発生して車の向きが変わったり、方向を維持出来たりする。

(コーナーリングフォースの発生メカニズムは一寸難しいので、ここでは割愛します)

 

コーナーリングフォースには次の様な特徴があります。

 

 

①図―15の様にスリップアングルがある一定以上の角度を超えると減少してしまう。

スリップアングルとは、図―16の様に車が進んでいる方向と、それに対するタイヤの向きの角度です。

つまり、ステアリングホイールを切り過ぎると、車の向きを変える力が減少してしまう。

 

 

      図―15 スリップアングルとコーナーリングフォースの関係

 

横軸のスリップアングルと縦軸のコーナーリングフォースとの関係ですが、車輪に掛かる荷重に伴って増加します。

 

 

図―16 スリップアングルとは(図中横滑り角と表示しています)

 

②タイヤ空気圧

タイヤ空気圧によってコ-ナリングパワーが変化する。

一般的に空気圧を上げることで図―17の様にタイヤのコーナーリングパワーは増加しますが、次第に頭打ちになりやがて減少傾向が見られる。

 

 

図―17空気圧とコーナーリングパワーの関係

 

コーナーリングパワーとはスリップアングル1度当たりのコーナーリングフォースで、タイヤの能力を表す数値。

コーナーリングパワーにスリップアングルを掛けるとコーナーリングフォースとなる。

ここでは、空気圧を上げるとコーナーリングフォースが増加する事の理解の参考。

 

次に空気圧と荷重の関係を図―18に示す。

タイヤの空気圧があまり高くない(使用過程で自然に抜けてしまう事がります)状態で、タイヤに掛かる荷重(図では接地荷重で表示されています)が増加すると、コーナーリングフォース(前述したように図-17コーナーリングパワーにスリップアングルを掛けたモノがコーナーリングフォースとなる)の低下が顕著になる。

 

 

図―18 タイヤ空気圧とタイヤに掛かる荷重によるコーナーリングフォースの関係

 

以上の様なタイヤの特性を基に自動車メーカーでは、タイヤサイズや空気圧を決定しています。

車を使用していると図―19に示すようにタイヤから自然に空気が抜けて行きます。

タイヤの内側にはインナーライナーという気体を透過しにくいゴムのシートが貼られていますが、そのゴムの分子よりも空気の分子の方が小さいため、空気がゴムの層に入り込み、タイヤ全体からじわじわと抜けていく。

 

 

図―19 タイヤ空気圧の減少(タイヤメーカー資料)

 

タイヤ空気圧の低下だけでも、自動車メーカーが狙った操縦安定性が得られなる。

更に、最大積載量を超える荷物を積んだり、乗車定員を大きく超えてタイヤに掛かる荷重が増えるとコーナーリングフォースがメーカーの計画した数値から外れ車が不安定になり、とっさのステアリング操作で車のバランスを失い事故に繋がることがある。

 

タイヤの空気圧調整

車が走ることにより、タイヤは路面との摩擦でゴム部材に熱が発生します。

当然ながらタイヤ内の温度も高まり、空気の膨張によって空気圧が上昇することになります。

指定空気圧はタイヤが冷えている冷間時のものなので、温度が上がり空気圧も上がった状態で調整してしまうと、温度が下がったときに指定空気圧を下回ることになります。

そのため空気圧点検・調整は、基本的には走行前の冷間時に行います。