§10 振動を吸収するダイナミックダンパー

 

造体は基本的には弾性体で必ず固有振動数※1を持つ。

※1.固有振動とは、外部からの入力を絶っても、その物体自身が振動を続ける現象でその振動数を固有振動数という。

一般に言われる共振点である。

 

この固有振動数付近の周波数で構造体が振動入力を受けると、入力よりも大きな振動を起こす。

改善策は構造体に入る振動入力の周波数から構造体の固有振動数を遠ざける事であるが、それには構造体の形状や剛性・質量を変更する必要がある。

しかし構造体の形状や剛性・質量を途中で変更することは他の性能やスペース等の問題で容易でない場合が多い。

 

構造体の設計変更を伴わない解決策として固有振動数での構造体の振動を吸収する目的で取り付けられるのがダイナミックダンパーである。

 

構造は簡単で図のようにバネとマスで構成される振動体である。

バネとマスの組み合わせで構造体の共振周波数に合わせた振動系を構成し、問題となる構造体の一番振動が大きい部位に取り付けることで、効果的に構造体の振動を吸収することが出来る。

 

 

この場合バネが持つ減衰特性が効果に影響を与える。

減衰が少なすぎると吸収する周波数域が狭くなり、大きすぎると振動吸収効果が低くなるので、振動に応じた最適チューニングが必要になる。(右側の図参照)

 

マスダンパー

ダイナミックダンパーと混同されることがあるが、マスダンパーはダイナミックダンパーと違ってバネの部分がなく、構造体にマスを直接取り付ける振動対策である。

構造体の振動により発生する音の低減には効果的である。

構造体の振動により発生する音は振動する物体の振動速度の二乗に比例するので、マスを取り付けて振動速度を低減させ発生する音を抑制できる。

またマスダンパーの場合は振動するモノに取付ることで固有振動数を変化させる働きもあり、別の振動系の固有振動数から取り付けた構造体の固有振動数を離すことにも使われる。