§1 何故モノが振動(共振)するのか

 

モノが振動するのは、

「弾性体に力が作用すると変形(変位)し、その時発生する復元力によりもとの位置に戻ろうとする」ことに起因する

 

<解説>弾性:外力で変形した物体が、力を取り去るともとに戻ろうとする性質

 

ここでは分かり易いように、下図の様な錘(m)を板バネ(k)でつるした状態で説明する

 

図ー1 振動のメカニズム

 

1.板ばねで吊るした錘の最初の位置

2.外力(起振力)により錘が右方向に移動させられる(振動系に起振力が加わった状態)

3.2.の状態で移動させられて錘は、板ばねの弾性力(復元力)により元の位置1.に戻る

4.質量のある錘には勢い(慣性)があるので、錘は元の位置1.を通過して4.の位置まで移動する

5.4.では再び板ばねが変形し復元力が発生し錘を1.の位置に戻そうとする力が発生する

6.しかし質量のあるには錘に勢いがあるので、元の位置1.を通過して再び6.までいどうする

 その後、錘は板ばねの復元力で再び1.と同じ位置まで戻ることになる

 

1.と同じ位置に戻った錘は慣性力を持っているので、1.を通り越して再び4.と同じ位置に戻り、後は4.以下の運動を繰り返すことになる

振動系に減衰(振動エネルギーを減じる力)がなければこの現象が無限に続く事になるが、何回か繰り返すと板ばねの内部損失により運動エネルギーは使い果たされ、やがて錘は1.の位置で停止する

以上がモノの振動メカニズムである

 

目視では図―1の様に錘が左右に動いている様子が観察される

 

図ー2は時間経過を縦軸にとって、刻々と変わる錘の左右方向の位置を表している

 

 

図ー2

 

この図-2の縦軸、横軸の表し方は一般的でないので、90度左回転させ縦軸を振動の大きさ、横軸を時間の経過で表したものが図ー3である

 

図ー3

 

この様に線グラフ(錘の動きを線と考えて)で、数値・数量の変化を示す縦軸に対し、経過時間を示す横軸を時間軸という

 

時間軸に対して、横軸を周波数で表現したものを周波数軸という

(このことは次項の「周波数とは」で詳しく説明する)

 

周波数軸のグラフは振動しているモノが、どのような周波数で振動しているか表すもので、振動・騒音現象を改善するためには必要不可欠なものである

振動するモノがどの様な周波数で振動しているか分析することを周波数分析という

(周波数分析については「周波数とは」の項で説明する)

 

自動車の乗員が不快に感じる振動や騒音の周波数を把握できれば、その周波数と同じ振動している部品を探し、その振動を低減することで振動騒音現象を改善できる

つまり周波数分析が振動・騒音の改善の基本となる

 

モノは特定の周波数で大きな振動になり、この時の振動周波数を共振周波数という

この共振周波数は、振動するモノの質量、そのモノを支える弾性体の剛性により決定される

(共振周波数の説明は「共振周波数」の項で説明する)

 

振動には剛体振動と弾性振動の2種類があり、どちらもその質量と剛性の関係で振動数が決まるが、剛体振動が質量とそれを支える剛性に分割が容易であるが、弾性振動は質量とそれを支える剛性が複雑であることが大きな違いである

(剛体振動と弾性振動については「振動の形態」の項で説明する)